相続・熟慮期間の起算点

相続放棄の申述を受理することは、家事事件手続法の審判事項です(同法201条、別表第1)。これが審判事項とされたのは、相続人に放棄の意思があるかどうかの確認と、法定単純承認(民法921条)に該当する事実が無いか等について調査判断するためですが、実際には申述書と、申述後の裁判所との文書のやりとりという、ほぼ形式的な審査により審判されています。

ところで、相続放棄の熟慮期間は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から進行します(民法915条1項)。この期間の起算点について以下の事例ではどのように考えるべきでしょうか。

Aの父Bは約10年前に家出をして家族とは音信不通のまま一人で生活していたが、その後病死した。AはBの死を死後間もなく知ったが、Bに価値ある財産はなく、負債については不明であった。約1年後、Bが生前、CがDから1000万円借り入れるに際して連帯保証人になっていたことが分かった。そのためAは家庭裁判所に直ちに相続放棄の申述を行った。相続放棄は認められるだろうか。

最高裁判所は、以上のような事例において「熟慮期間は、相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時または通常これを認識しうべき時から起算すべきである。」(最判昭和59年4月27日民集38-6-698)と判示して例外的に申述を認めました。

この様な例外を認めれば、実質的な不都合を回避できます。例えば悪質な債権者が、被相続人の遺産が債務超過となるような高額の債権の存在を相続人に知らせずにおき、熟慮期間の経過を待ってから相続人に弁済を請求するような事案でも相続人を救済することが可能となります。

 

 

 

 

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